モンティ・ホール問題 IMDパズルランド

   この問題は数学者も間違えるほど勘違いしやすい条件付き確率の問題だとして様々なサイトや本で解説されています。勘違いした数学者の中には数論や確率論で名高いポール・エルデシュもいました。しかし、彼らは勘違いはしたが、確率の考え方を間違ったわけではなく、問題が正しく伝わってなかっただけのように思えます。

 条件付き確率というのは高校数学で登場する概念ですが、多くのサイトでは、確率に馴染みのない読者も想定しているためか、条件付き確率の公式を使うのではなく、表などを使って様々な解説がなされています。この問題は科学雑誌ニュートンプレスでも取り上げられ、二重の円を描き、内部を分割した円グラフを3つ描いて説明してありました。
ここでは、表や図は使わず、常識で理解できる論理的な解法を示しますが、その前にこの問題についての背景や問題内容およびネット上にある、よくある間違った解説を指摘しておきます。

●問題の詳細について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用

モンティ・ホール問題とは、確率論の問題で、ベイズの定理における事後確率、あるいは主観確率の例題のひとつとなっている。
※注 事後確率とは条件付き確率の1種である。

時は1990年、モンティ・ホールが司会者を務めるアメリカのショー番組の中で次のようなゲームが行われた。

 プレーヤーの前に閉まった3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレーヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレーヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。
ここでプレーヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。

プレーヤーはドアを変更すべきだろうか?


 ニュース雑誌 Parade にて、マリリン・ボス・サヴァントが連載するコラム「マリリンにおまかせ」において上記の読者投稿による質問に、「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答した。すると直後から、「彼女の解答は間違っている」との約1万通の投書が殺到し、本問題は大議論に発展した。
答えをめぐっての騒動
 投書には、1000人近い博士号保持者からのものも含まれていた。その大部分は「ドアを変えても確率は五分五分(2分の1)であり、3分の2にはならない」とするものであった。サヴァントは投書への反論を試み、同年12月2日、数通の反論の手紙を紹介した。
 ジョージ・メイソン大学 ロバート・サッチス博士「プロの数学者として、一般大衆の数学的知識の低さを憂慮する。自らの間違いを認める事で現状が改善されます」
 フロリダ大学 スコット・スミス博士「君は明らかなヘマをした(中略)世界最高の知能指数保有者自らが数学的無知をこれ以上世間に広める愚行を直ちに止め、恥を知るように!」
 サヴァントは、より簡易にした表を掲載「ドアを変えれば勝てるのは3回の内2回、負けるのは3回の内1回だけ、しかしドアを変えなければ勝てるのは3回の内1回だけ」と述べる。この問題に関する1991年2月17日付、3回目の記事の段階でサヴァントに対する反論は9割程度を占める。

 「現実が直観と反する時、人々は動揺する」とサヴァントはコラムで反論の声に応じ、下記の説明を試みる。
 「 司会者がドアを開けてみせた直後にUFOがステージに到着して宇宙人が出てきたと仮定する。人間の出場者が最初に選んだ扉を宇宙人は知らずに司会者がまだ開けられていない2つの扉のどちらかを選択するよう宇宙人に勧めると、この時の確率が五分五分になる。しかし、それは宇宙人が本来の出場者が司会者から得たヒントを知らないためである。仮に景品が扉2にある場合司会者は扉3を開ける。扉3に景品がある場合は扉2を開ける。つまり景品が扉2または扉3にあるなら、出場者が扉の選択を変えれば勝利する。『どちらかでも勝てるのです!』でも扉を変えなければ、扉1に賞品がある場合しか勝てないのです。 」
 サヴァントの再再々解説でも大論争へと発展、「彼女こそ間違っている」という感情的なジェンダー問題にまで飛び火した。

---引用終わり  以下省略

  以上のように、専門家も交えて議論になったわけですが、その原因は上述の青字で書いてあるゲームの内容について誤解があったからであろうと思われる。サヴァントは数学者に対しては、以下のように言えば何でもなかったのではあるまいか。
 「このゲームでは、司会者はどれが当たりであるかを知っていて、彼は必ず、はずれのドアを開けて見せます」

 サヴァントの説明をよく読めば、上記の条件が前提であることに気づくはずですが、おそらく最初の勘違いから抜け出せなかったのでしょう。
 上のような事実を承知の上でこの問題を考えれば、サヴァントの解説も分かりやすいと思われるが、ゲームの詳細がすべて明らかになった現在でも、表を用いて面倒な解説がしてあります。これは、司会者が1つのドアを開けた後は残った2つのうち1つが当たりだから、当たる確率は2分の1という考えに惑わされやすいということでしょう。
 実際、司会者がどれが当たりであるかを知らない場合、BかCを開けてはずれであっても、次のような4とおりの状況が考えられ、いずれの状況も出現確率が同じですからドアを変えても変えなくても当たる確率は2分の1になります。

図T

  

※上記4とおりが同じ出現確率である理由は後で説明します。

 この問題は、問題の意味が正しく伝わっても多くの人に理解しづらく感じられるようで、ネットで上位にある解説でも誤ったものがあります。
 以前、「モンティホール問題」でYouTubeで検索してみると黒板に表を書いて解説してあるものが最上位にありました。大学受験生までを対象にしたある塾の解説で、非常に分かりやすいという評判のようですが、大きな間違いが2つあり、2つあるためにたまたま答が合っているわけですが、それをコメント欄で指摘しても誹謗中傷とみなされたのか、コメントは削除され、動画は未だに掲載されています。2020年5月現在は3番目あたりのところに表示されているようですが、再生回数は解説の動画としては最も多いようです。 多くの人がこれを見て分かった気になるのはもんだいがありますので、今回は実際の映像を基にした画像を引用して間違いを分かりやすく指摘しておきました。以前は黒板の解説図と同じ模式図を使って、どの動画を対象にしたものか分からないような書き方になっていましたが、僅か2〜3年の間に、のべ4万人がこの間違った解説を見ている状況を考え、実際の動画にある黒板の図を用いて間違いを指摘しました。ふつうに解説するよりもこの問題の本質が分かる解説になりましたので、その点では良い見本になったと思います。YouTubeの動画は投稿者がいずれ、間違いに気づいて削除することになると思います。

※著作権上は批判や間違いの指摘をする場合の引用は認められており、引用に際しては出典元を明示することが慣例となっていますが、先方の立場もありますので名称の記載は致しません。(これはよくある典型的な間違いであり、他のサイトでもこのような間違いを見受けます)

※この動画のコメント欄を見てみると間違いに気づいている人もいるようで、具体的に次のような投稿があります。
例 
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健二さん
自分が正解している場合、相手は他の2枚を開けるパターンが存在しており、その点が欠落してませんか。その場合、2勝2敗となり、確率は同等になります。よって、この説明だと選択肢を変えても変えなくても同じになると思います。もっと分かりやすく説明して欲しい。
*************************
「分かりにくい説明」というのではなく、根本的に誤りです。
------追記終わり


引用図


 上の解説は最初から間違いです。
 一番左の, Aに景品がある場合を例にとって解説します。
 動画では☆が景品、チェックのあるドアはプレーヤーが選んだドア、×印のところが司会者が開けたドアになっています。
図U

 表に確率が書き込まれていないこのような図は、どれも同様に確からしい(同じ確率で起きる)事象をすべて列挙して確率を求めるときに使うものであり、読者もそれは分っているようですが、司会者がどれが当たりのドアであるかを知っていたなら、これらは同様に確からしい(同じ出現確率)とは言えません。これが第1の間違いです。 司会者がまだドアを開けていない状態は下図になり、これらP, Q, Rの3パターンは同じ確率で出現します。つまり、景品がAのドアにある場合のP, Q, Rの確率は、いずれも3分の1になります。


 ここで司会者は景品のあるドアとプレーヤーが選んだドア以外から1つのドアを選び、そのドアを開けます。
下図の左側は司会者がドアを開ける前、右側はドアを開けた後であり、×は司会者が開けたドアです。




 上記解説で明らかなように, 黒板の最も左の部分である図Uの模式図は下の左図となりますが、正しい図は右図となります。




 司会者がドアの中身を知らずに、たまたま開けたドアがはずれであった場合は、プレーヤーが最初に選んだドアも、もう一つの開けられていないドアも当たる確率は2分の1であるが、司会者が、はずれのドアだと分かっていて、はずれのドアを開けることになっていたということなら、最初に選んだドアが当たる確率は3分の1、もう一つの開けられていないドアの当たる確率は3分の2となります。

 司会者が知っていたか、知らなかったか、それが重大なポイントであり、正しい解法は、「知っていて、必ずはずれのドアを開ける」という前提条件が反映されたものになります。
 しかし、この問題(ゲーム)は元々、確率に馴染みのない一般の人たちを対象にしたものでしたから、できることなら、確率の考え方をほとんど知らない人でも簡単に理解できるような常識で分かる解法が望ましいと思い、次のような解法を考えました。このページを書いている現段階では、ネット上でも下記のような考え方は見当たりませんが、いずれ、このような考え方が行き渡り、この一風変わった考え方がふつうの解説のように感じられるようになるかもしれません。このような考え方は、色々なバリエーションが考えられますが、本質は同じです。幾とおりかの場合分けを考えたときは、それらが同様に確からしい(出現確率が同じ)ということを証明したり、直感に頼ったりする必要がありますが、この考え方の利点は、その必要がなく、常識で判断できることです。

常識で理解できる論理的な解法

この問題の前提条件をもう一度確認しておきます。

プレーヤーが1つのドアを選んだとき、それが当たりである確率は3分の1である。プレーヤーはA,B,CのドアのうちAを選んだ。従って、BかCの少なくとも一方がはずれである。 司会者はどれが当たりのドアかを知っており、必ずはずれのドアを開ける。
<解答>
  この問題ではプレーヤーが1人いて、A、B、Cのドアのうち1つを選んだということになっているが、状況を少し変え、プレーヤーはPさんとQさんの2人がいて、最初にPさんがドアAを選んだとしましょう。Qさんは抽選で特別ゲストに選ばれた人でしたので、残りのドアBとドアCの両方を開けて、どちらかに景品が入っていたらそれを貰えることになりました。するとPさんが当たる確率は3分の1であるが、Qさんが当たる確率は3分の2です。番組を盛り上げるためにPさんとQさんは同時にドアを開けることになりました。しかし、ドアとドアが離れているために、Qさんは同時に2つのドアを開けることができません。そこで、すべてのドアの中身を知っている司会者が、「ドアCは、はずれだからCは開ける必要はありません」と告げました。当然ですが、司会者がそのように告げても、Qさんの当たる確率が3分の2から2分の1に減ったりするはずはありません。何故なら、BかCの少なくとも一方がはずれであるのは当たり前であり、はずれのドアを1つ知らせても、それがBかCかの違いによって、Qさんが当たる確率に違いが出てくるわけではないからです。中身を知っている司会者が、Qさんが開ける手間が省けるように、はずれのドアを1つ教えただけですから、Qさんが当たる確率は依然として3分の2ということになり、ドアBが当たる確率が3分の2ということになります。従って、元の問題で考えると、プレーヤーがAのドアを選び、司会者がCのドアを開けて、はずれであることを示したなら、Bのドアが当たる確率は3分の2で、Aが当たる確率は3分の1のままだということになります。
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別解
ドアが5つある場合に別解を考えてみましょう。
景品は1つのドアのところにしかありません。



 今回も上記と同じように、プレーヤーはPさんとQさんの2人ですが、今度はPさんとQさんは対等です。まずPさんがドアAを選びました。その後、Qさんは残り4つのドアから1つを選ばなければなりません。Qさんがどれを選んでもPさんとQさんの当たる確率は同じで、5分の1です。そこで何を考えたか、Qさんはどれが当たりであるかを知ってる司会者に、「B、C、D、Eのうち、少なくとも3つははずれだから、3つのはずれのドアを教えてくれ」と言いました。ここで、「それもそうだね」と言って教える司会者はまずいません。Pさんがはずれる確率は4/5で、Pさんが選んだドアがはずれのドアであったなら、3つのはずれのドアを教えるということは、Qさんに当たりのドアを教えるのと同じことになり、不平等になるからです。つまり、3つのはずれのドアを開けて教えたら、B、C、D、Eのうち開けられずに残ったドアが当たる確率が5分の4ということになります。この論理はドアが3つのときも適用できます。

後記
 モンティホール問題は、おそらく、問題の条件が正確に伝わっていなかったために、数学者も巻き込んだ騒ぎになったと思われますが、これより二十数年前に話題となった問題に「3囚人の問題」があります。この問題は問題が誤解される余地はありませんでしたが、本質的にはモンティホール問題と同じです。しかしながら、問題の設定や表現が巧妙にできているためにネット上にある解説も複雑になっています。