●矢づちさん サイト管理者 辻 |
十数年前のことである。東京都千代田区麹町に |
きれいなビルがあった。そこの洗面所は割と大き |
く、4〜5人は鏡の前に立てたのだが、そこで手 |
を洗いながらふと鏡を見ると、テレビでよく見か |
ける有名人に似ている人が会社の同僚らしき人と |
一緒に横に立っているではないか。有名人という |
のは日本テレビのUFOの番組によくでていらっ |
しゃる矢追さんのことである。特に二十数年前頃 |
は頻繁にその番組が放映されていて、有名人をあ |
まり知らない私でさえもそれ以来、顔はよく知っ |
ていた。しかし、どういうわけか名前の方はいい |
加減に覚えていたみたいで矢追(やおい)さんで |
はなく矢槌(やづち)さんと憶えていた。そこで |
私が「お宅、やづちさんに似てますね」と言うと |
お二人ともポカーンとした様子で「やづちです |
か?」とおっしゃる。「えーっ!やづちさんを知 |
らないんですか。えーっ!有名な人がいるんです |
よ」などと言いながら、有名人を知らない私より |
も、知らない人がいるもんなんだなと思いつつ、 |
お宅達以外誰でも知っていますよ、と言わんばか |
りの口調で「日本テレビのディレクターをやって |
た人で・・」などと得意げになってあまり口にし |
たことのないようなことを説明し始めた。話して |
いるうちにもう一人の方が「それ、UFOの番組 |
ではないですか」とおっしゃるので「あ、そうで |
すよ」と言うと「やおいという人ではないですか」 |
とさらにおっしゃる。そこで、やっと自分の間違 |
いに気がついて、「あーそうでした」と答えると |
その人が言った。「本人ですもん」 |
あ然!あいた口がしばらく塞がらなかった。 |
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